計算機実習 I

第六回 (2015 年 5 月 14 日)

構造体、共用体、列挙型

http://www.sw.it.aoyama.ac.jp/2015/CP1/lecture6.html

Martin J. Dürst

© 2005-15 Martin J. Dürst 青山学院大学

目次

• ミニテスト
• 前回の演習
• 構造体
• 型宣言: typedef
• 共用体
• 列挙型

ミニテスト

• 授業開始までにログイン済み
• 授業開始まで教科書、資料、筆箱、財布などを鞄に入れ、鞄を椅子の下に
• テスト終了後その場で待つ

C 言語の応用: gcc

• GNU Compiler Collection, formerly the GNU C Compiler
• 最初の公開は 1987 年
• C, C++, Objective-C, Fortran, Java, Ada, Go 等のプログラム言語に対応
• 出力では Intel x86 や ARM を肇 30以上の機械に対応
• 本体約 175万行、テスト約 55万行
• バージョン 4.8 以降で C++ を採用

前回の演習結果

前回の演習問題について

• 発展問題はともかく、そうでない問題は必ず提出
  (これからも使う内容の演習)
• 予習が非常に大事

前回の演習: 05C1

[昨年度資料につき削除]

前回の演習: 05C2

[昨年度資料につき削除]

自覚: 分かることと分からないこと

本授業について、一番分かることと一番分からないことそれぞれ三つ列挙しなさい。

プログラミング上のデータの大切さ

• 寿命:
  • ハードウェア: 3-5 年
  • ソフトウェア: 10 年くらい
  • データ: 30 年以上 (例: 卒業証明証、年金関連)
• 情報テクノロジーでデータ構造の設計は関数の設計などより大切

データ型の大まかな分類

C の基本的なデータ型

(basic types)

• 整数・文字 (char, short, int, long)
• 浮動小数点数 (float, double)

C の派生データ型

(derived types)

• 配列、関数
• 構造体 (struct)、共用体 (union)、列挙型 (enum)
• ポインタ

構造体 (struct) の簡単な例

typedef struct {     // 型 Person の宣言
    char name[40];
    double height;   /* m */
    int weight;      /* kg */
} Person;

Person student = { "Taro Aoyama", 1.70, 70 }; // 定義と初期化
double bmi = student.weight /                 // 利用
      (student.height * student.height);

構造体

(structure)

• 複数のデータの組み合わせ (並び) のデータ型
• 構造体の「部品」はメンバ (member)
• 複数の変数を組み合わせて一つの変数として使用可能:
  • 変数の宣言と定義、初期化
  • 代入
  • 関数の引数と戻り値
• メンバ毎にしかできない操作: 演算、入出力
• 関数は機能を抽象化、構造体はデータ型を抽象化
  [オブジェクト指向はこの二つを結びつく]

新型の宣言: typedef

(教科書 pp. 272-273 参照)

• typedef は struct 以外でも使用可能
• 型の命名
• プログラムが鮮明
• 型と変数の名前を区別できるような決まりが可読性を向上
  (例: 変数名: 小文字; 型名: 頭文字が大文字)

typedef の作成方法と使用方法

例: 4×4 の行列 (三次元グラフィックス、ゲーム等で多用)

1. 変数の定義: 宣言したい型の変数を定義
   例: double a[4][4];
2. 型名に置換: その変数名を型名に変更
   例: double Matrix[4][4];
3. typedef の完成: 定義全体の前に typedef を付与
   例: typedef double Matrix[4][4];
4. typedef の使用: 既存の型名と同様
   例: Matrix a;

参考: 構造体の宣言の種類

1. 歴史的な原型 (構造体タグ使用)
   struct Person {...}; (本授業で ×)
2. 構造体タグを使った定義の後に typedef
struct Person {...};
typedef struct Person Person; (本授業で ×)
   (構造体タグと typedef による型名は同一でも別でもよい)
3. 構造体タグと typedef の組合せ
   typedef struct Person {...} Person; (本授業で ×)
4. 構造体タグの省略 (推奨)
   typedef struct {...} Person; (本授業で ◎)

参考: 使用可能な定義:

• Person p1;(前スライドの (2), (3), (4))
  • 簡潔で便利
• struct Person p1; (前スライドの (1), (2), (3))
  • C の初期からの残り物
  • 再帰的データ構造以外では不要

構造体と関数

double bmi (Person p)
{
    return p.weight
        / (p.height * p.height);
}

• 構造体は引数でも戻り値でも使用可能
• 引数でも戻り値でも値渡しとで実行 (int などと同様)

展望: データ + 機能 (関数) ⇒ オブジェクト (object)

(C++ の class は struct の拡張)

構造体の戻り値

引数でも戻り値でも構造体が使用可能

具体例:

Complex add(Complex a, Complex b)
{
    Complex result;
    /* a と b の実部と虚部から result の実部と虚部を計算 */
    return result;
}

列挙体 (enum)

• 少数のものの区別に使用
  例: じゃんけんの手、学部・学科、銀行口座の種類
• 名前を使うことでプログラムは分かりやすい
• 列挙体の中身は整数 (int)

列挙体の応用例

例: 03C2、03C3 (階段じゃんけん) の分かりやすい改造:

typedef enum
    { Rock, Scissors, Paper } Janken;

Janken moveA, moveB;
 ...
if (moveA == Paper)
    pointA += 5;

共用体 (union)

• 構文は struct と同じが、
  • struct はメンバごとに場所を確保
  • union はメンバを重ねるので同時に一種のデータしか納まらない
• 共用体の応用
  • メモリの節約
  • 低レベルでのデータ変換
  • オブジェクト指向のシミュレーション

演習についての補助

• 型 (構造体) の定義から始める
• 構造体は実体に合ったもの
  悪い例 (演習課題にはたまたま二つの点が出現):
  typedef struct { double x1, x2, y1, y2; } Point;

  良い例: typedef struct { double x, y; } Point; Point p1, p2;

• typedef は常識
• ヒントをよく読む

演習問題の概要

• 06A1: 日付のための構造体
• 06A2: 二つの点の間の距離
• 06B1: 複素数の足し算
• 06C1: 成績表
• 06C2: 複素数の関数による計算
• 06C3 (発展問題): 趣味の数のグラフ

入出力の詳細に注意

次回までの準備

• 残りの演習問題を宿題として完成、提出
• 分からないことについてしっかり復習
• 来週の総合復習テスト (紙、約 30 分) の準備