情報数学 I

第十三回 (2014年 1月14日)

述語論理の応用
Applications of Predicate Logic

Martin J. Dürst

http://www.sw.it.aoyama.ac.jp/2013/Math1/lecture13.html

AGU

© 2005-14 Martin J. Dürst 青山学院大学

これからの予定

前回のミニテストについて

 

前回の復習

量記号の復習

量記号の場合の注意点:

述語論理式と量記号の性質

  1. ¬∀x: P(x) = ∃x: ¬P(x)
  2. ¬∃x: P(x) = ∀x: ¬P(x)
  3. (∀x: P(x)) → (∃x: P(x))
  4. (∀x: P(x)) ∧ Q(y) = ∀x: P(x)∧Q(y)
  5. (∃x: P(x)) ∧ Q(y) = ∃x: P(x)∧Q(y)
  6. (∀x: P(x)) ∨ Q(y) = ∀x: (P(x)∨Q(y)
  7. (∃x: P(x)) ∨ Q(y) = ∃x: P(x)∨Q(y)
  8. (∀x: P(x)) ∧ (∀x: R(x)) = ∀x: P(x)∧R(x)
  9. ((∀x: P(x)) ∨ (∀x: R(x))) → (∀x: P(x)∨R(x))
  10. (∃x: P(x)) ∨ (∃x: R(x)) = ∃x: P(x)∨R(x)
  11. ((∃x: P(x)) ∧ (∃x: R(x))) ← (∃x: P(x)∧R(x))
  12. (∃y: ∀x: P(x, y)) → (∀x: ∃y: P(x, y))
  13. P(x) が恒真 ↔∀x: P(x) が恒真

総和・総積と量記号の関係

総和: i=1 1/i2 = 1 + 1/4 + 1/9 + 1/16 + 1/25 + ...

総積: i=1 1+1/(-2)i = ...

全称限量化: (∀i ∈ℕ+: i>0) = i=0 i>0 = 1>0 ∧2>0 ∧3>0 ∧...

存在限量化: (∃i ∈ℕ+: odd(i)) = i=0 odd(i) = odd(1)∨odd(2)∨odd(3)∨...

ド・モルガンの法則の拡張

 

量記号の組み合わせ

(∃y: ∀x: P(x, y)) → (∀x: ∃y: P(x, y))

(∀x: ∃y: P(x, y)) ↛ (∃y: ∀x: P(x, y))

素数 (prime number) の数が無限である:

(すなわち、いくら大きい x を選んでも、それより大きい素数 y が存在する)

x: ∃y: (y > x ∧ prime (y))

順番を入れ替えると意味が変わる:

y: ∀x: (y > x ∧ prime(y))

(全ての (整数) x より大きい素数 y が存在する)

 

素数の無限の数の証明

 

量記号の性質の具体例: 述語などの定義

U = S: 情報数学 I を受講する学生

age(s): 学生の年齢 (満何歳)

college(s): 学生の在籍学部 (例: 理工)

female(s), male(s): 学生が女性である、男性である

from(s, k): sk 出身である (簡単なため、k が都道府県又は「abroad」)

具体例 1

(∀x: P(x)) ∧ (∀x: R(x)) = ∀x: (P(x) ∧ R(x))
例: 全ての学生において、30歳以下である、かつ全ての学生において、理工学部在籍である = 全ての学生において、30歳以下かつ理工学部在籍である

(∀s: age(s)≤30) ∧ (∀s: college(s)=理工) = ∀s: (age(s)≤30 ∧ college(s)=理工)

注: s が三回別々に束縛されているため、三回別変数 (以下同様)
(∀s: age(s)≤30) ∧ (∀t: college(t)=理工) = ∀u: (age(u)≤30 ∧ college(u)=理工)

 

具体例 2

(∀x: P(x)) ∨ (∀x: R(x)) → ∀x: (P(x) ∨ R(x))
左から右への例: 全ての学生において、30歳以上である、又は全ての学生において、理工学部在籍である → 全ての学生において、30歳以上又は理工学部在籍である
(∀s: age(s)≤30)) ∨ (∀s: college(s)=理工) → ∀s: (age(s)≤30) ∨ college(s)=理工)

右から左への反例: 全ての学生において、男性である又は女性である
しかし、全ての学生が男性である、又は全ての学生が女性であるが偽

(∀s: male(s)) ∨ (∀s: female(s)) ↚ ∀s: (male(s) ∨ female(s))

 

具体例 3

(∃x: P(x)) ∨ (∃x: R(x)) = ∃x: P(x) ∨ R(x)
例: ある学生において、東京都出身である、又はある学生において神奈川県出身である = ある学生において、東京都出身である又は神奈川県出身である

(∃s: from(s, Tokyo)) ∨ (∃s: from(s, Kanagawa)) = ∃s: (from(s, Tokyo)) ∨ from(s, Kanagawa))

 

具体例 4

(∃x: P(x)) ∧ (∃x: R(x)) ← ∃x: P(x) ∧ R(x)
右から左への例: ある学生において、広島県出身であるかつ女性である → ある学生において、広島県出身である、かつある学生において、女性である
(∃s: from(s, Hiroshima)) ∧ (∃s: male(s)) ← ∃s: (from(s, Hiroshima) ∧ male(s))

左から右へな反例: ある学生において、北海道出身であるかつある学生において女性である
ある学生において北海道出身であるかつ女性であるとは限らない

(∃s: from(s, Hokkaido)) ∧ (∃s: female(s)) ↛ ∃s: (from(s, Hokkaido) ∧ female(s))

 

応用分野の知識